あれから数日。セブンサインへの決死隊に参加する事も無く、
ただ、作業のようにスペクターを裁く日々を繰り返していた。
あの日見た幻影は、まだ私の脳裏に焼きついたままだった。
「はーぁい♪エス・・・・ちゃん・・・・^^;
またまたブラックエスちゃんに変身中^^ノ」
魔道士スティア。サキュバスの姦計にはまった日以降も、
時折こうして、声をかけてくる。
「なにようだ。」 例によって私も声が荒い。
「散歩だ。付き合え。」太い声が私の頭上から降り注ぐ。「な!」
振り仰げばそこには緑の壁。牙とあだ名される蛮族だ。
「エスさん、ご一緒しませんか??」
よくみれば、後ろには「自称初心者」の弓使いも一緒にいる。
名はソフィといったか。
「散歩?どこへ行くというのだ?」
じゃれ付くマンドラゴラを払いながら、
私は3人を見もせずにいた。次の瞬間。
私が払っていたマンドラゴラは、ノシイカと化した。
「いくか?いかんのか?」
マンドラゴラの完全体は、ほぼ一撃でつぶされてしまっていた。
「わかった。付き合おう。」
こうでも答えないと、私がつぶされかねん。
牙にそのような考えや回りくどい表現が無い事を
知るようになったのは、最近になってからのことだ。
今のも、私が手間取っているのをフォローしてくれたのだろう。
ただ・・・。彼にとって、この処刑場は「ただの通り道」に
過ぎないだけだ。
我々は、荒地にきていた。「女王のご機嫌を伺いに行く。」
彼はそう言い、エルフ3人(白いのは一人だけだが・・・)が
後に続いた。
「こんな荒地の真ん中にある岩穴に女王だと?」
たしかに、内部は広い。しかし・・・女王とは・・・・。
「たのしみですう^^;」 「記録とれるかなぁ・・・」
他の二人は、彼を信頼しているのか、ただもくもくとついて行く。
途中にジャイアントアントの群れが寄せてくること数度。
どうやら、彼の言う女王とはクィーンアントの事らしい。
「ここが最奥。そして・・・」指差す先に鎮座する巨大生物。
「かなり離れているな。これ以上近づくのは危険か?」
「食われていいのなら、いってみるのだな。」
その場に座すると単々と語り始める。オークの祭。
古の鐘を手にオークの群れが、ここになだれ込んでくる
勇猛なる大祭の話を。
「また、濃い祭りよねぇ^^;」 「素敵ですぅ^^」
素敵かどうかはともかく、勇ましさだけは万民が認めるところだ。
そんな風に感じていたところで、スティアが動いた。
やはり近くで記録を残したいのだろう。
「止めておけ。」カレは短く呟いた。
「ん・・・・・ちょっとくらいなら・・・ねぇ^^」
応援をこうように私に視線を送る彼女。
それは視線をそらしてごまかすことにする。
少しムクレテみせる彼女を背に、
「みていろ。」ゆっくりと動き出す緑の怪物。
巧みなステップで一匹だけ、「護衛の蟻」を
おびき出してきた。
「回りにひしめくザコさえ、 これだ!」
彼の拳が護衛に打ち込まれる。
硬い音が響く。ダメージに・・・なっていない!?
「まぁ、そうだろうな。ガァァアアアア!!」
気合を入れなおす。拳の回転が目にも止まらぬ速度に達する。
護衛も自分が噛み付いた相手の力量を知ってか攻撃に力が入る。
「援護を!」我に帰った弓師が叫ぶ。
「よし!」
真正面からでは無理だ。護衛の背後に慎重に回り、
少しでも鎧の隙間を抜こうと、
探りながら攻撃を加えていく。
ほとんど意味はないのは、100も承知。
だがじっとしてもいられない。
私は、攻撃を加え続けた。
ジリジリと押されていく蟻はそれでも、
援軍を呼ぶような声は上げず
一人で、くらいつく。緑の壁に立ち向かう。
護衛の任務を受けた誇り。蟻にそれがあるかは分からない。
だが、両者の戦いはそれほど拮抗していたのだ。
「ちょ・・・あの群れの中の一匹だけで、
これなのぉ!?勘弁してぇ><;」
話の発端にもなったスティアが叫ぶ。
それでも回復の呪文は精神力が続く限り途切れることなく詠唱された。
また禍々しさを内に秘めた弓が放つ弓師の一矢は、
確実に鎧の隙間を撃ちぬく。
「・・・もうちょっとです! がんばりましょう!」
回りに激を飛ばすのも忘れない。
そして・・・護衛の蟻は終わりを悟ったのか小さく声を上げて、大地に伏せたのだった。
「引くぞ。大丈夫だな。」その声に反応して移動を始める三人。
「ちょっとぉ、意地悪しなぁーい!
ここまでしなくても言って貰えばわかるって^^;」
「百聞は一見にしかず。ヒューマンどもが継承する呪文だったか?
まぁそういうものだ」
おもわず、顔を見合わせる三人。ふと笑みもこぼれるというものだ。
「では、帰還スクロールで帰りましょう^^」ソフィの声に
みなそれぞれに巻き物をとりだす。
「手持ち、みなさんありますね^^」
彼女の念押しにうなずくと、巻物を開く。
「ウヒィ^^」 奇妙な笑みを浮かべた牙。
3人はすでに、スクロールの支配下にある・・・まさか!
「牙さん!?」 「あんた、スクロールは?!」
「ない!」
キッパリ返事をすると、カレは走り出した。地上に向かって。
「先ほど確認しましたのにぃ!!>< 」
ソフィの声は彼に届いたかどうか。
「まぁ、あの男を止められるものなど、ないさ。」
私はソフィの肩を軽くたたく。
「散歩の時間は終わりだな。狩りに戻らせてもらうよ。」
処刑場のお化けどもに向かって、歩き出す。
「あーい、エスちゃん、おつかれ!って私がつかれたよ^^」
いい物を見たと顔いっぱいに表現して、スティアはその場に座した。
「当分は、要らないわねぇ。あれは^^;」「はい^^;」
ソフィもそれに習った。
「では、またな。」 「はーい^^」
「ブラックエスちゃんは・・・きえたかな?w」
「さてな。」
私は歩き出す。見上げる空に浮かぶ先陣たちの影に
また一人、巨大な壁が追加された。
これは、まだまだ、ずーと遠くの空の上のお話。
私がこの地で主役を演じるのは、まだ等分先のようだ
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